債券先物は1985年に開始され、日本で最初の本格的な金融デリバティブ取引となりました。流動性が高く、市場で活発に売買されているので、国際市場の動向を見る上での指標のひとつになっています。
この記事では、債券先物の仕組みとメリット・デメリットについて解説します。
債券先物とは
債券先物取引とは、債券を取引対象とした先物取引で、将来の売買を現時点で約束する取引のことです。売買の数量や価格を決め、期日(満期)が来た時点で取り決めた数量と価格通りに売買を行います。
債券先物は、現物の国債の価格変動リスクをヘッジする手段として、1985年に「長期国債先物取引」が開始されました。
制度の概要
長期国債先物で取引されるのは、以下のような条件の「標準物」を呼ばれる架空の債券です。
- 額面 100円
- 利率 6%
- 残存期間 10年
現実に存在する債券では、1日経てば残存期間が1日減ってしまうなど残存期間が変わってしまいます。そこで、売買しやすいように、利率や残存期間など取引を定型化した「標準物」を取引対象としたのです。
限月と呼ばれる受渡期日は、3月・6月・9月・12月と3カ月ごとになっています。常に利率と残存期間が同じになるように作られているため、価格の連動性が保たれているのです。
決済までに反対売買して決済してもいいですし、受渡日には実在する現物の債券を受け取ることもできます。
ただし、国債先物取引の1単位は1億円と非常に大きな金額なので、個人投資家はほとんど参加していません。
債券先物は、基本的には国内外の機関投資家が取引する市場になっているのです。
現在は、長期先物以外にも以下の取引ができます。
- 中期国債先物取引 中期国債標準物(利率3% 残存期間5年)
- 超長期国債先物取引 超長期国債標準物(利率3% 残存期間20年)
- ミニ長期国債先物取引 長期国債標準物
ミニ長期国債先物取引は、取引単位を長期国債先物取引の10分の1にした取引です。
債券先物と現物債券との違い
債券先物は、東京証券取引所に上場しているので、立会時間中は活発に取引されています。債券先物の立会(取引)時間は以下の通りです。
- 午前 8:45~11:00
- 午後 12:30~15:00
- 夜間 15:30~翌5:25
株式市場の動向を見る時は、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの株価指数の動きをチェックしますが、債券市場の動向を見るには、債券先物の値動きを見るのが一番わかりやすいです。
債券の現物の価格形成を見てみると、長期金利の指標になっている10年国債でも、常に売買が成立しているわけではありません。午前中ほとんど値段がつかないこともあるのです。流動性という側面から見ると、債券の現物は低いのです。
その点、債券先物取引は活発に取引されています。株式の日経平均株価やTOPIXのように、債券市場の動向を見る上では、債券先物値動きを見るようにしましょう。
債券先物の価格変動要因
国債の価格は日々変化しています。債券先物も毎日活発に売買されています。株式の場合は、企業業績や景気が上向くと買われますが、債券先物はどのような要因で売買されているのでしょうか。
国債は政府の信用力
国債は日本政府の信用をもとに発行されているので、通貨である「日本円」そのものと同じの価値を持っています。国の信用が揺らいでないか常にチェックを行っていく必要があるのです。債券の信用度を測るには「格付け」をチェックします。
格付けについては、以下の記事を参考にしてください。
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金利動向
債券の価格は金利動向に影響を受けます。金利と債券の関係は、以下の通りです。
金利 | 上昇 | 低下 |
債券価格 | 下落 | 上昇 |
金利が上昇すると債券価格は下落しますし、金利が低下すると債券価格は上昇します。
景気動向
景気と金利、債券価格の動向は以下のとおりです。
景気拡大 | 景気縮小 | |
金利 | 上昇 | 下落 |
債券価格 | 下落 | 上昇 |
景気は債券先物の価格変動にどのような影響を与えるのでしょうか。
通常、景気が良くなれば金利は上昇し、債券価格は下がります。反対に、景気が悪くなると長期金利は低下し、債券価格は上昇します。
景気が良くなると、民間企業は設備投資などを増加させます。資金の借入需要が高まることで、貸出金利に上昇圧力がかかるのです。
銀行は民間企業への貸出が増えれば、預金で集めた資金の運用を国債から貸出に振り向けます。
これにより国債には売り圧力がかかり、債券価格は下落します。
逆に不景気になれば個人消費が減退し、企業も生産を控えるようになりますので、資金需要が減退し、貸出金利に低下圧力がかかる事になります。
銀行は企業の資金需要が減退するので、国債に資金を振り分けます。その結果、国債には買い圧力がかかり、価格は上昇していきます。
株式市場との関係
景気が良いときには、企業業績も伸びるので、株式が買われる傾向にあります。一方、景気が悪いときには債券が買われる傾向にあります。
このように景気に対する見方によって、株式の先物が買われたり、債券の先物が買われたりします。一般に株式先物が買われるときには債券先物が売られる傾向にあるのです。
まとめ
今回は、債券先物について解説しました。債券先物は、「標準物」と呼ばれる架空の債券を元に取引が行われています。しかし、現物の債券よりも活発に取引されているので、債券市場の動向を見るには、債券先物を見るようにしましょう。
そして、もっとも活発に取引されているのは、長期国債10年ものです。債券先物の動きは債券の現物だけでなく、株式市場にも影響を与えます。債券先物を取引しなくても、価格はチェックするようにしましょう。