債券の「格付け」って重要?誰が決めているの?

債券は株式や商品(金・原油)・不動産などと比較しても安全度が高い金融商品です。満期(償還)まで保有すれば元本が返ってきますし、保有中には決められた金利がもらえます。

しかし、債券は有価証券なので、銀行預金のように元本保証ではありません。国や企業などの発行体がデフォルト(債務不履行)した場合に、元本や利息が支払われない恐れがあるのです。

そんなデフォルトリスクを測るための目安が「格付け」です。債券投資をする時は、必ず格付けをチェックしなければいけません。

この記事では、格付けの定義と格付け機関について解説します。

格付けとは

出典:S&P

格付けとは、国や企業などが発行する債券の支払い能力や信用力を、格付機関が記号でランクづけした情報をいいます。信用力が最も高いAAA(トリプルA)から信用力の低いB(シングルB)、C(シングルC)などと表され、評価が下がるにしたがってデフォルト(債務不履行)リスクが高まります。代表的な格付け期間であるS&Pのレーティングは以下の通りです。

出典:S&P

発行体(国・企業)は、格付けが高いほど低い利率で資金調達できますし、投資家は、格付けを参考にして債券を購入します。

また、企業が発行する「社債」だけでなく、国が発行する「国債」の格付けもされています。国債の格付けは、国のカントリーリスクに影響するので、債券市場だけでなく、株式市場や為替市場にも大きな影響を与える点に注意しましょう。

格付けの特徴

格付けは、発行体と利害関係がない第三者の格付機関によって行われます。格付けは発行体自体に行われるのではなく、債券ごとに行われます。ですから、同じ発行体の債券でも格付けが異なることがあるのです。

また、格付機関によって債券の評価や記号は異なります。債券投資を行う際は、なるべく複数の格付けをチェックするようにしましょう。

ただ、発行体の信用力は時間とともに変わるので、見直しが適時行われます。A格を取得していた社債でも、業績の悪化などによりB格に格下げになる可能性もあるので注意が必要です。

代表的な格付け機関

それでは、代表的な格付け機関を見ていきましょう。

ムーディーズ

出典:ムーディーズ

ムーディーズは、米国の格付け会社で、S&P(スタンダード&プアーズ)と並ぶ2大格付け機関。世界中の格付け業務の大半は、ムーディーズとS&Pの2社で占められています。格付けが多いほど発行体の信用力を比較しやすいので、大手に集中しやすい傾向があるからです。

ムーディーズは1900年に設立され、1909年から格付けを行っています。現在の主流であるアルファベット表記での格付けもムーディーズが始めたものです。

米国だけでなく、欧州や日本などでも格付けを行い、世界の格付けの40%のシェアを誇っています。

S&P(スタンダード&プアーズ)

 

出典:S&P Global

S&Pは150年以上の歴史を持ち、世界28カ国に事業展開しています。ムーディーズと並ぶ格付け機関の最大手の一つです。

日本では、1975年に初めて格付けを行いました。日本では、「S&P グローバル・レーティング・ジャパン株式会社」、「S&P グローバル SF ジャパン株式会社」の2つの法人が存在しています。

フィッチ

 

出典:フィッチ

フィッチは、ロンドンとニューヨークに本社を置く格付け機関。国債や社債などの格付けを行っています。日本では、1989年に東京事務所を開設しました。

R&I(格付投資情報センター)

出典:R&I

R&Iは、日本国内において国債や社債の格付け事業を中心に、年金・ファンドに関する情報提供なども行っています。

日本経済新聞が64.5%の株式を保有しており、同社の連結子会社になっています。1975年に日本経済新聞社の社内に設置され、1985年に「日本公社債研究所」として独立。2000年に現在の社名に変更しました。

JCR(日本格付研究所)

出典:JCR

JCRは、1985年に設立された日本国内における主要な格付け会社。国債や社債の支払い能力に関しての格付けを行っています。

格付けと利率の関係

格付けと利率の関係は以下の通りです。

格付け
利率

これを見るとわかるように、格付けが高くなれば利率は低くなりまし、格付けが低くなれば利率は高くなります。

一般に、BBB以上を「投資適格」、BB以下を「投機的」と判断します。しかし、投資適格でも絶対にデフォルト(債務不履行)しないというわけではありません。

また、投機的な債券は「ハイイールド債」と呼ばれ、デフォルトリスクはありますが、高利回りなので投資家に人気があります。米国の社債市場では、ハイイールド債が約2割を占めています。

一方、日本ではこれまでハイイールド債を投資対象として見ていませんでした。しかし、低金利が続く中、2019年5月に消費者金融大手のアイフルが150億円のハイイールド債を発行。JCR(日本格付研究所)の格付けはBB(ダブルB)でした。

今後、ハイイールド債の発行が日本でも増えてくれば、より格付けの重要性が増すことが予想されます。

まとめ

今回は、格付けの定義と格付け機関について解説しました。格付け機関は米国が中心で、ムーディーズとS&Pで8割近くを占めています。しかし、日本でも債券の発行が増えるにつれ、R&IやJCRなど国内の格付け機関も多くのレーティングを行うようになりました。

債券の発行体の信用力を判断するためには、格付けを必ずチェックする必要があります。ただ、格付け会社ごとに判断が異なることがあるので、複数の格付けを確認するようにしましょう。

 

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